原油高騰で変わる漁業―現場で起きている変化と各浜の対策―

こんにちわ〜かーりぃです!

 もともとは業界向け新聞のコラムとして書いていたテーマでしたが、「不安をあおる可能性がある」という理由で掲載は見送られることになりました。確かにコラム向きの内容ではなかったので、来月はまた別のテーマでコラムを書こうと思っています!楽しみにしててくださいね✨

 ただ、せっかくいろんな現場の漁師さんからたくさんの貴重な情報を提供していただき、個人的にも面白い考察ができたと思うので、ブログ用にまとめてみました。少し長いですが後悔させない情報量となっていると思うので、ぜひ読んでいただだけたらなと思います!

目次

「軽油が、いつ入ってくるかわからない」

 「軽油が、いつ入ってくるかわからない」

 そんな声が、漁師の口から聞かれるようになりました。原油価格の高騰は、単なる燃料費の問題にとどまらず、網や箱、塗料といった資材の供給にも影響を及ぼしています。現場では今、「高い」だけでなく「手に入らないかもしれない」という新たな不安が広がっています。

 ある定置網漁師は、比較的影響は限定的だと話します。「うちは漁場も近いので、燃油経費の上昇は月に4万円ほど」。沖合に出る漁業に比べれば負担は小さいものの、発泡スチロールの値上がりを受けて安価な箱へ切り替えるなど、現場での対応を進めています。

 一方、沖合底曳網漁業の負担は深刻で、燃油(A重油)経費だけで月に300万円ほどの増加。ロープや網、発泡スチロールも軒並み値上がりしています。元売りには政府による補助が出ているものの、現場の仕入れ価格にはほとんど反映されておらず、むしろ値上げが続く状況です。魚の浜値が5%ほど上がっても、燃料や資材が30〜50%上昇すれば吸収できるはずもありません。

 素潜り漁を行う漁師は、「軽油がいつ手に入らなくなるかわからない」と語ります。現地での軽油価格は3月までは1リットル128円でしたが、4月には152円へと上昇。この一カ月で約30円の値上がりとなりました。

 瀬戸内海からは、「シンナーが手に入らない」という声も届いています。実際にある漁協では、塗料関連の出荷制限や納期遅延、数量制限の可能性が示されており、値上げ前に燃料を多めに入れておくといった対策も取られていますが、僅かな節約にしかなりません。ここ数年で魚価自体は上昇傾向にあるものの、石油価格とは関係なく、コスト上昇を販売価格に転嫁できているわけではないのが実情です。

 こうした中で、漁師さんたちは難しい判断を迫られています。燃料価格が上がれば、沖に出る回数を減らしたり、操業時間を短くする選択も出てきます。しかし「自分たちが燃油を使わなければその分、他の船や漁協が使うだけ」という現実もあり、単純な使用制限は必ずしも有効とは言えません。供給が不安定な中では消費を抑えすぎることで、逆に機会を失うリスクもあります。

 沖合で操業するかにかご漁でも、操業時間を短くするなどして対応しています。漁の調子が良く状況は深刻ではありませんが、商人さんなど周囲の理解を得ることの難しさも感じているといいます。経費が上がれば価格を上げざるを得ない一方で、これまで買い支えてくれた顧客との関係から簡単には値上げできないという葛藤もあります。

 さらに遠洋漁業において燃油価格の高騰はより大きな打撃を与えています。国内の燃油価格は補助制度によって抑えられていますが、海外ではより深刻です。例えばケープタウンでは120円/Lから380円/L程度まで急騰し、カナリア諸島でも同様に高騰しています。その結果、ホルムズ海峡閉鎖前に比べて1日あたりの燃油経費は40万円から100万円へと約2.5倍に跳ね上がりました。

 加えて、一部の国では外国船への燃料販売を制限する動きも出ており、従来は漁獲枠(TAC)の残り具合で操業していた遠洋漁船も、現在では残油量や次の給油地を見据えながら操業海域を変更せざるを得なくなっています。さらに、2026年2月にはインド洋マグロ類委員会(IOTC)の勧告に基づき、遠洋マグロはえ縄漁船128隻のうち、計19隻の減船が発表されています。

 乾物加工を伴う漁業では、さらに深刻な問題が起きています。海苔養殖では乾燥工程に灯油を使用しますが、供給が止まったことでシーズン途中で生産終了となる事例もありました。今後、西日本で煮干しの生産が盛期を迎え、夏には北海道で昆布の生産が本格化することを考えると、A重油や灯油の不足の影響はさらに広がる可能性があります。

 今回の聞き取りから見えてきたのは、原油価格の高騰が漁業に与える影響は一様ではなく、漁法や地域によって大きく異なるということです。定置網のように燃料消費が比較的少ない漁業では影響は限定的である一方、沖合や遠洋漁業では燃料費の増加が経営を直撃しています。そして生産低下に伴い、加工業者や運送業者などサプライチェーンにまで影響が及んでいます。

 その一方で、こうした状況が漁業の構造に変化をもたらす側面もあります。燃料費の高騰によって採算の合わない操業を控える漁師が増えれば、市場への供給量は減少し、魚価は上昇します。これまで資源管理や品質向上、顧客との信頼関係構築に取り組んできた漁師にとっては、漁獲圧や船数が減り、持続的な操業がしやすくなるという見方もあります。

 また、資材価格の高騰はブランド戦略にも影響を及ぼしています。ネーム入りの発泡スチロールを使用してきた漁業者にとっては、資材費の上昇が大きな負担となります。安価な箱への切り替えは可能ですが、ブランド価値とのバランスが問われます。その一方で、これまで築いてきた顧客との信頼関係や口コミといった無形の価値は、こうした局面においても揺らぎにくい強さを持っていることが浮き彫りとなりました。

 何がどこまで値上がりするのか見通せない状況の中、魚価は必ずしも上がらず、生産現場は厳しい経営を強いられています。「餌やりは櫓漕ぎでしようか。」という笑い話も今後現実になるかもしれません。地元に水産物を届けたいという思いがありながらも、国内で適正な価格がつかなければ、輸出を選ばざるを得ない現実もあります。こうした課題は、もはや現場だけの問題ではなく、消費者を含めた国民全体で向き合うべきものだと感じています。


燃料供給に関する相談窓口について

こうした状況を受け、農林水産省は3月31日に「燃料油や石油製品等の供給に関する相談窓口」を設置しました。
燃料油や石油製品の流通や取引に影響が生じた場合に備え、事業者からの情報を受け付ける体制を整えたものです。

燃油高騰の関係で新しく設置された窓口とのことなので、もし燃料の調達や価格などで困っていることがあれば、活用してみてください。

詳細(プレスリリース)はこちらです👇
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/260331.html

内容に応じて連絡先が分かれています。

・燃料油や石油製品全般
kakouryutsuka1@maff.go.jp

・沿岸・沖合の漁船漁業
kanrichouseika@maff.go.jp

・遠洋漁業
kokusaika_soukatsuhan@maff.go.jp

・養殖業
saibaiyousyokuka_soukatsuhan@maff.go.jp

「浜の声を聞きたい」という趣旨で設置された窓口とのことなので、遠慮なく相談して大丈夫とのことです。
もし周りにも困っている方がいれば、ぜひ共有してみてください。

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